感想文  「あと1年」コール

2006年04月05日
あと365日で定年退職の日を迎える。世間の人様よりも遅い定年で、精神的にも肉体的にも、しみじみと衰えを感じながら退職の日を迎えることになる。  日本聖公会法規によると、第27条1項に「司祭は、満70才に達した後最初の3月31日または満70才に達した3月31日に定年となり、退職する」とある。何回も読み、何回も議論した条項だが、いよいよ自分がその規定の対象になるかと思えば、不思議な感慨を覚える。すでに退職した先輩たちも同じように感慨にふけりながらあと一年を過ごしたに違いないと思うと、もう少し何か言葉をかければよかったのにと、今の心境になってはじめて気がつく。  もともと何事につけ、オセンチで、ロマンチストで、独りよがりの性格であるゆえに、感慨にふける「どつぼ」にはまりこんで、妄想にふけっているのかも知れない。最後のイースター、最後のクリスマス、最後の洗礼、最後の司式、最後の説教等々、この一年、何事をするにも「最後のーー」をつけたくなってくるに違いない。  こんな文章を書きたくなるのも「どつぼ」のはじまり。  「つれあい」には、みっともないからあまり定年、定年と人の前で言うなと言われている。だから人の前では言わない。ただし、「家内から定年退職、定年退職と言うなと言われている」と言って歩いている。  野球で言えば、9回の裏、総立ちになった観衆の大合唱、「あと一人」、「あと一球」コールがこだまする。  そして、今、小生の頭の中に響く声が聞こえる。「あと1年」「あと1年」と。                                  (4月1日)